Helena Deland 「Someone New」のレビューを書きたいと思います。
モントリオールのシンガー・ソングライターHelena Delandによるデビューアルバム。
愛の不思議さをテーマにした本作は、初期のエリオット・スミスのアルバムを彷彿とさせるような、うねりのあるベースとギターに対して抑えたボーカルが彼女独特の雰囲気を醸し出しています。90年代のテクスチャーで表現された楽曲はポーティスヘッドのトラックに蜜のような甘いボーカルが発酵したエロティシズムを感じさせます。素晴らしい作品をリリースし続けるLuminelleからまたしても傑作の登場です。
more records より引用
90年代からの影響を受けたSSW
見出しをつけてみましたが、そんな女性SSWの台頭は2019年から本当に多かった。
Helena Delandもその中に含まれていると思います。
ただHelena Delandという女性は、引っ張ってきている元が少し違うような気がします。引用した紹介文にもElliott Smith(特にインディー盤2作)とPortisheadの名前がありますが、僕は納得してしまいました
地味で印象に残らない可能性もある暗いアルバムですが、個人的にはものすごい歪な傑作だと思っています。
音数は決して多くないのですが、曲展開も一癖あるものが多く、中盤のいくつかの曲はいくらなんでも暗い。加えて、サイケデリックと言ってもいい音や展開が、フォークを基本とした曲群の中に散りばめられています。
ミニマムながらもエフェクトも多用しながらうねる演奏と対照的に、高音がきれいで澄んだボーカル。全体のトーンは一貫していて、ちょっとはまったらズルズルと聞いてしまう魅力があります。
個人的な感想です
2020年10月リリースで、僕が聴いたのは2021年に入ってからです。
「いい声の人だなぁ。あと、暗いなぁ」っていうのが、とりあえずの印象でした。
しばらくはアルバムを聴き通せませんでした。2曲目が好きすぎて、いつも2曲目で止まっていたからです。
2曲目「Truth Nugget」という曲です。素晴らしい曲!
最近ようやくこの「Truth Nugget」の沼を抜けまして、通して聴けました。
「Comfort, Edge」は耳に残るキャッチーさがあるし、「Smoking at the Gas Station」は前半と後半で景色がゆっくり変わり、徐々に立ち現れる不穏な雰囲気に聴いていて呑まれてしまいます。
これだけ「暗い」とか「不穏だ」とか言っていると「何がいいんだよ」と突っ込まれてしまいそうですが、曲がそもそも良いのは勿論として、グッドメロディーがそこかしこにあるので聴き逃せないのです。
全体のトーンがまとまってて、ドラム・ベースもとてもいいし(ドラムのエフェクトは素晴らし!)、色々素晴らしい点はありますが、僕は何よりメロディーに惚れ惚れしてしまいます。
余談:少しだけ音の印象の話
音のことを少し書くと、実音自体は狭いところで鳴っているし、歌われているような印象です。音場が狭いという表現でいいのでしょうか。ドラムのエフェクトや、アンビエント、コーラスの重ねなどが入ってくると、それらが狭い部屋で渦巻いて鳴っている感じが僕は大好きです。何より、このアルバムに合ってると思います。
ボーカルは距離近いですが終始抑えめ。きつい所もないしとても綺麗に一定で聴きやすい。凄い。ミックスのプロセスを公開して欲しい。
1stにも関わらずアルバム通してまとまった良さがあるのは、以前の記事にも書いたArlo Parksもそうだったので、少し思い出しました。音の方向は違いますが。
Arlo Parksについて書いた記事はこちら
Helena Deland 「Someone New」情報まとめ
Helena Deland 「Someone New」
1. Someone New
2. Truth Nugget
3. Dog
4. Fruit Pit
5. Pale
6. Comfort, Edge
7. The Walk Home
8. Seven Hours
9. Smoking at the Gas Station
10. Lylz
11. Mid Practice
12. Clown Neutral
13. Fill the Rooms
Spotify
「Someone New」MV