Now,Now 「Threads」
『Threads』は、インディーロックバンド、Now, Now(旧名:Now, Now Every Children)の2枚目のスタジオアルバムです。2012年にTrans Recordsからリリースされました。新バンド名での1stアルバムとなる。また、新ギタリスト兼バックヴォーカリストのジェス・アボットを迎えたバンド初のフルアルバムでもある。
Threads (Now, Now album) wikipediaより引用
これを書いているのは2022年2月です。
2012年に出たこのアルバムについて今更書いているのは、単に筆者がNow,Nowを知ったのがつい最近だからという間の抜けた理由です。
広く認知されたバンドではないと思いますが、こんな名盤聴き逃してたのかと悔しい気持ちです。
Cacie Dalagerの歌声とメロディーが一番表立った魅力だと思いますが、もう少し突っ込んでこのアルバムについて書いてみたいと思います。
変則チューニングのツインギターと歌詞
Jess Abbottが加入してからのNow,Nowは完全に覚醒して、『Neighbors』というEPを挟んで『Threads』をリリースしています。
『Neighbors』は音も『Threads』に比べると無骨で、荒々しい面が多く出ています。
『Neighbors』で明らかに芽が出たCacie Dalagerのメロディーが『Threads』では完全に開いており、音はシューゲイザー的なアプローチや、シンセを多く用いたドリーミーなサウンドが前面に出ています。
それが、個人的な体験が色濃く反映されていると思われる歌詞ととても良く反応しています。
更に、Now,Nowの楽曲は変則チューニングの曲が多いです。
オープンDとかならまだしも、E A C# E B Eというあまり見ないチューニングが使用されていたり、楽曲により様々です。
ボーカルのCacie Dalagerはある程度ルートを保ちながら、Jess Abbottが変則チューニングを利用した独特で印象的なフレーズを弾きまくってくれます。
「Lucie Too」という曲はE A C# E B Eで演奏されています。同名の日本のバンドもいますが、ファンだったようです。
📽Now, Now – Lucie, Too – Audiotree Live(YouTube)
「You were too small I should have known not to leave you alone
The morning it told me
You take what you can get and you die with it」
という歌詞がとんでもないですが、とにかくかっこいい。。
ボーカルのCacie Dalagerはインタビューで「あなたは、このアルバムに個人的な経験がいかに多く寄与しているかを話し続けています。それについて少し教えていただけますか?」と聞かれてこう返答しています。
一般的に、つながっていると感じようとすることと、断絶していると感じることについて、いくつかあったと思います。かつて持っていた感覚に戻ろうとしたり、何かが起こる前にどのように感じていたかを確かめたくなったり。それが個人的な関係で起こっていることであれ、死であれ、ただつながっていると感じたいのです。
interviewmagazine.comより翻訳して引用
このアルバムは1曲目の「The Pull」で「引っ張る糸を探す/そして、私たちはそれが解けるのを見ることができる」と歌い、最後の曲「Magnet」で「君はまだ引力を感じることができるかい?」と歌っています。
インタビューにもある、繋がりや断絶についてアルバム通して書かれ続けています。
コンセプチュアルなアルバムではないですが、一貫してアルバムの印象を決定付けているテーマであることは間違いないと思います。
フロントマンであるCacie Dalagerが、書き連ねた歌詞に滲み出ているテーマと、柔らかい音と変則チューニングギターの轟音が混ざり合って『Threads』は出来ています。聴き手は、時々郷愁的な気持ちに襲われたり、激しい轟音で飲み込まれます。それはCacie Dalagerが「繋がる」ということは如何に遠くて難しく、強い欲求であると感じている表れかもしれません。
現在のNow,Now
残念ながら素晴らしいフレーズを弾きまくっているJess Abbottは2017年で脱退しています。
彼女はTancred名義でソロ活動しています。Now,Nowと全然違う明るく乾いた音楽をやっています。
そして、Now,Nowは二人体制となり、『Threads』から6年経った2018年にアルバム『Saved』をリリースします。2022年現在、『Saved』が一番最新のアルバムとなります。
久しぶりにリリースされたアルバムは大きくシンセポップに舵を切った、とても開かれたアルバムでした。
Cacie Dalagerのメロディーと声は深みを増して、オルタナティブロック好きからすると寂しい気持ちもあるものの、これはこれでとても良いポップアルバムでした。
あとがき
最近になって「今更ながら」はまったNow,Nowについて好きなように書いてみました。
『Threads』のレビューをするつもりが、現在のNow,Nowにまで話が及んでしまいました。
『Threads』は2012年に発売された、当時24,5のメンバーが作ったアルバムです。
そこには粗さがあって、「これからのバンド」という感じがまだまだあります。ただこのアルバムが物凄くかっこいいアルバムであることは変わりないと思います。すっかりファンになりました。
個人的には、アタックをばっつり揃えたギターやリズムに対する工夫とか書きたいけど長くなるので控えます。
Jess Abbottの脱退は悲しいですが、新しい体制のアルバムを引き続き待ちたいと思います。